BARと書いてスペイン語で「バル」と読む。イタリア語のように「バール」と言われることもあるが、私には「バル」と聞こえるので「バル」と呼ぶことにします。
まずは朝のコーヒーに始まり ―朝から酒を飲んでも全く問題ないのですが―、正午過ぎには帰宅途中に食前酒代わりの一杯。夕方の買物や散歩の合間にもコーヒーやビールを、そして夕食後は顔見知りとの歓談を肴にまたまた一杯と、スペイン人の飲むものならおよそ何でもある、といっても過言ではないのがバル。飲みものが何でもあるということは、必然的に食べ物も揃っているということで、さすがにこちらはスペイン人の口にするものなら何でも、とはいかないものの、トーストから酒のつまみまで実に様々。生活習慣に根ざしたスペインのバルは、1日の中で実に多様な役割を果たしていて、常にバルに来る人々にコミュニケーションの場を提供しながらも、その時々で違った表情を見せる、そんな店舗なのです。
だから、もしあなたがバルに行けば、今という時間のスペイン人やその生活の一端に接することができる、と私は考えています。それは、美術館へ行けばピカソの絵を見ることができ、バルセロナという街を歩けばガウディの建築に触れられるのと同じこと。