賢人アルフォンソ10世が酒場の店主に対し、「ワインを供するときには腸詰めやハム、チーズなどの薄切り片でグラスやジョッキにフタをしなくてはならない」という御触れを出したという逸話が本当であったかどうかは別として、もともと箱や瓶の蓋のことを意味する「タパtapa」という単語が、「つまみ」をも意味するようになったことは前に書いたが(9頁「タダタパの地、グラナダへ」参照)、タパtapaをつまむのは、バルで飲む大きな楽しみの一つである。 そのタパは、大きく分ければ、 1.カネをとる(有料の)タパ 2.タダ(無料の)タパ の2種類に分類することができる。 カネをとるタパというのは、有料で注文するつまみのことで、カネを払う以上は客の側につまみの内容や量を指定する権利がある。
スペインは大変に地方性に富んだ国で、その気候や言語、あるいは人間と同様に、タパも非常に郷土色が強い。だから、スペイン中を旅行すれば、その土地にはその土地のタパが存在するわけであるが、今回の滞在ではスペイン中のバルをくまなく廻ってタパを口にすることはできなかった。残念ながらそれらのタパを紹介することはできないが、だいたい全国何処へ行っても口にすることができる、ごくごく一般的なタパは、イカリングフライcalamares fritos、ポテトサラダensalada rusa、茹でた小エビgambas、煮込みguiso、イワシの酢漬けboquerones、パンくず炒めmigasなど。また、その大きさは、ラシオン(大皿)racin、その半分のメディア・ラシオンmedia racinなどと、量を指定することができる。
一方、タダのタパというのは、酒類またはそれに準ずる飲料を注文すると付いてくる、いわば"つきだし"のようなものであり、タダである以上、客の側に内容の選択権がないことが多い。一般的なタダタパは、オリーブの実aceitunas、ビスケットgalletas、ポテトチップスpatatas fritas、パン切れtrasos de pan、その他カネをとるタパや付属するレストランのあまりもの、などである。しかしグラナダ、あるいはアルメリア、ハエンでは、このタダタパの事情が少しばかり異なる。なぜなら、「タダのつまみ」とはいうものの、ハンバーガーやホットサンドなどそれだけで軽い昼食になってしまうようなタダタパもあれば、フライの盛り合わせなど、驚くほどの量を出してくれるバルもあるからである。
下に掲載したグラナダのタダタパは、私がグラナダでバルについて調べるにあたって約一ヶ月間、たまにはレストランにも行ったが、基本的にはバルに通いつめ、昼はビールを主食にタパを、夜はタパを肴にワインを、といった毎日を繰り返した結果として口にすることできた、全部で計134食のタパである。
タパの写真は>>>スペインのBARが見える写真
こちらにも写真多数掲載>>>スペインのBARがさらにかわる?かもしれないBLOG
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